紅葉狩

第六天魔王の申し子呉葉(紅葉)戸隠山の鬼女(貴女)伝説

平安時代中期(冷泉天皇から円融天皇の御代の頃)、信濃国(現在の長野県)の戸隠山に、紅葉と云う鬼女が住み手下を引き連れては、夜な夜な山を降りては付近の村々を襲うとの噂が広まり、村人たちは日々怯えていました。
秋も半ばの頃、鎮守府将軍、信濃守平維茂が従者を従えて、鹿狩りに出かけたところ戸隠の山中に差し掛かると、数人の次女を従えて酒宴を開く美女に出会います。不審に思った維茂は、従者に名を尋ねさせにやります。女達は、名を名乗りませんが、身分の高い女性の忍び遊びで紅葉狩の宴を行っていると云います。維茂は、麓への道を尋ねて通りすぎようとしますが、女達は、維茂を引き留め、巧みな言葉と色香で、酒宴を共にするように誘います。維茂は勧めに応じて盃を重ね、美女の舞う見事な舞と酒に酔い、深い眠りに落ちてしまいます。女達はそれを見届けると、鬼の本性を現わし、維茂の命を狙おうとします。その時、維茂が日頃より信心している八幡神の化身する翁が現れ、維茂主従の危難を救います。翁は、女達の正体こそが戸隠山の鬼女であることを告げ、神剣を授けます。八幡神の威徳により一命を救われた維茂は、鬼女たちを追って鬼の岩屋へ乗り込み、激しい戦いの末、鬼女の妖術に苦しみながらも、八幡大神より授かった神剣の神徳に依って、めでたく鬼女たちを成敗します。
  
この神楽は、信州戸隠、鬼無里(現、長野県長野市)、別所温泉などに伝わる紅葉伝説、また、謡曲「紅葉狩」などを題材にした創作神楽です。
 

神楽詠
奥山に紅葉踏み分け鳴く鹿の 声聞くときぞ秋は悲しき
戸隠の山の梢を眺むれば 錦いろどる秋のもみじば
紅葉散る 里は静かに 眠るとも 聞こ ゆるものは 山寺の鐘