滝夜叉姫

一族の土地争いの末、非業の死を遂げた父の無念をはらすため鬼女となり夜叉となった平将門の娘皐月姫

天慶の乱により、新皇を名乗り王朝国家に謀反を企てたとして、同族の平貞盛、藤原秀郷らに滅ぼされた平將門。その娘、皐月姫(さつきひめ)は、非業の死を遂げた父の無念をはらすため呪詛の神として名高い貴船明神の荒神の社に丑の刻参りの祈願を行った。満願二十一夜目に貴船の社の荒御霊より妖術を授かり「滝夜叉姫」と名を変え妖怪の美姫となって将門の故郷下総の国相馬の内裏に立て籠り夜叉丸、蜘蛛丸ら手下を集め朝廷転覆の謀反を企てる、朝廷は滝夜叉姫成敗の勅命を下し大宅中将光圀、山城光成ら討伐軍を下総の国へ派遣しました。当初討伐軍は姫の色香に惑わされ、妖術に苦しめられますが陰陽の術に長けた光圀らは滝夜叉姫正体を見破り夜叉丸、蜘蛛丸らを討ち果たして姫を追い詰めます。追い詰められた滝夜叉姫は鬼女に変化し夜叉となって討伐軍と戦い激闘の末陰陽の霊術で滝夜叉姫の妖術を封じて姫を討ち果たし、反乱軍を鎮圧する物語です。
  
この演目に登場する貴船明神は元々は水神を祀る社で呪詛の神と呼ばれるようになったのは、都に伝わる「宇治の橋姫」という伝説の中で貴船明神で呪詛の儀式を行ったという記述から起こったもので、丑の刻参りも貴船の神に夜参詣し(丑の刻)願をかけると心願成就する風習が起源で呪詛が目的では無かったそうです。本来は都の水の守り神として貴船(きぶね)の地に建立されていますが建立されていますが社の名は「きふねじんじゃ」と濁らずに呼ばれています。
 

神楽詠
あまつかぜ雲の通ひ路吹きとじよ 乙女の姿しばし止めん
あづま路へ旅立つ我が身顧みず 悪魔を払い世をば鎮めん