土蜘蛛

まつろわぬ民、土蜘蛛と呼ばれたものたちの怨念が集まり京(みやこ)に災いをもたらす

古より、纏ろわぬ民として葬り去られ葛城の地に封じられたものたちの怨念が土蜘蛛の精魂となって顕われ天下を乱さんとするも、武勇の誉れ高い源頼光を恐れ、志を得ることがままなりませんでした。あるとき頼光が病に臥したと知るやこの機乗じて頼光を亡き者にしようと謀を企てました、ある時頼光が侍女胡蝶を典薬頭(てんやくのかみ)に使いに出したと聞き胡蝶を取り食らってに化身し、典薬頭の薬を毒薬とすり替えて頼光に与えます。深夜頼光の体の加減を聞きながら土蜘蛛の化身が頼光に近づき命を奪おうとするも、枕元にあった源氏重代の宝刀膝丸の太刀(後に蜘蛛切と命名)にて頼光に斬り付けられ蜘蛛の精魂は葛城の窟へ逃げ帰りました。頼光の屋敷に詰めていた家臣卜部季武(うらべすえたけ)、坂田金時(さかたのきんとき)らは物音に気付いて駆けつけましたが蜘蛛の精魂を取り逃がしてしまいます。頼光は事の子細を駆けつけた季武、金時ら四天王の面々に話し宝刀膝丸の名を蜘蛛切丸と改めて季武らに授け、土蜘蛛を討ち取って来るよう命じます。土蜘蛛の残した血筋の後を追って葛城の窟へと向かった四天王らは土蜘蛛の古塚にたどり着き塚を突き崩して土蜘蛛の精魂と対峙します。土蜘蛛の繰り出す妖術に苦しめられながらも蜘蛛切丸の霊力によって死闘の末、見事土蜘蛛の精魂を打ち取ると言う物語です。
 
草紙ものなどに伝わる頼光の土蜘蛛退治の物語は、蓮台野や神楽岡、北野神社の裏山などが舞台となっていますが、神楽演目では謡曲「土蜘蛛」出典にして演じているところが多く葛城山が舞台となっています。下河内神楽団もこれに倣って葛城の蜘蛛の古塚としております。神楽団によっては「葛城山」の演題で舞われているところも多数あります。
 

神楽詠
葛城の山は静かに眠るとも 岩屋の中は蜘蛛の古巣よ
月清き夜半とも見えず雲霧の 懸かれば曇る心なるかな
夏と秋行き交う雲の通い路は 肩に涼しき風の吹くらん
草も木も 我が大君の国なれば いづくか鬼の 棲なるべし
我が背子が来べき宵なりささがにの蜘蛛のふるまひかねてしるしも