戻り橋
死者も戻り来る戻り橋、夜な夜な美女となり老婆となりて鬼が現れては庶民を苦しめておりました
平安時代中期、後一条天皇の御代の頃、夜毎に京の都羅城門あたりに現れる怪物と源頼光の重臣四天王らが一条戻橋を舞台に戦ったと言う伝承を基にした神楽演目で、四天王の一人渡辺綱は、頼光から都に現れる怪物を退治するように命じられる。ある日、傘売りを生業とする男が戻り橋のあたりで商売しておったが、日が暮れ始めたので家に帰ろうとすると老婆が現れ、傘を1本分けて欲しいと請われる。正直者の傘売りは言われたとおりにするが、その老婆こそが大江山の茨木童子が化身したものであった。傘売りは逃げ惑い、危機一髪のところに渡辺綱が現れ、一命を助けられる。綱は一戦を交えるが、茨木童子は虚空飛天の妖術で大江山から酒呑童子を呼び、現れた酒呑童子の妖術によって綱は、倒れてしまう。そこへ綱の一命が危ういと石清水八幡神のご神告を受けた四天王の一人・坂田金時が綱の加勢に現れる。綱と金時は童子らに立ち向かい、弓八幡の神徳により酒呑童子の妖術を打ち破り綱は茨木童子の左腕を切り取ったが、童子らは虚空飛天の妖術を使って大江山へ飛び去ってしまう。
平家物語には愛宕山の鬼女伝説として切り落とされた腕を乳母に化けて取り返す同じ戻り橋を舞台にした物語の記述もあります。(ただし愛宕山の鬼女(扇折小百合)右の腕を切り落とされるという設定の違いはありますが)神楽では大江山の鬼伝説と関連付けて茨木童子と酒呑童子で舞われることが多いようです
神楽詠
戻り橋鬼女が住まうと人がいう 都の空は今日も曇りて
戻り橋鬼女が住まうと人がいう 都の空は今日も曇りて
いづくにも帰るさまのみ渡ればや もどり橋とは人の言ふらん
戻り橋鬼が住まうと人がいう 夜の都は聞くも恐ろし
さむしろに衣かたしき今宵もや 我をまつらん宇治の橋姫