悪狐伝

中国殷の国、インド天竺はマガタ国、そして日本(ひのもと)へ… 三国に渡り妖婦となりて国を乱した九尾狐。討ち取られた後も石となって邪気を吐き続けたという三国伝来白面金毛九尾の妖狐退治の物語

 

下野国(しもつけのくに)は那須野原(なすのがはら)に逃げた 三国伝来白面金毛九尾の妖狐(はくめんきんもうきゅうびのようこ)を退治する伝説を神楽にしたものです。 昔、白面金毛九尾の狐(はくめんきんもうきゅうびのきつね)がいて、殷の国(いんのくに=中国)で妲己(だっき)と呼ばれ天竺(てんじく=印度)マガタ国に於いては華陽婦人という妖婦となって権力者に取り入って悪事をはたらき国を乱していましたが、正体を見破られ姿を隠します。そしてこの日本(ひのもと)へと逃れ来た妖狐は、玉藻前(たまものまえ)と言う美女化身して、 鳥羽上皇の寵愛を受けて国を乱し日本を魔国へと企んでいました。 しかし稀代の陰陽師安部清明(あべのせいめい)の子孫、陰陽博士・安部泰親(あべのやすちか)の霊力により見破られ、 那須野原に逃れ機を伺っていました。そこで朝廷は、弓取りの名手として名高い三浦介義純(みうらのすけよしずみ)、上総介広常(かずさのすけひろつね)らに追討の軍を命じて那須野原へと向かわせます。千年万年と生き続けたという九尾狐の妖術に苦しみながならも度重なる合戦の末、みごと討ち取ると言う物語です。

討ち取られた九尾狐の怨念と屍は雷鳴とともに巨大な石(殺生石)となってその後二百数十年に渡って毒気を放ち近ずくものの命を奪い続け、後の世に会津の国示現寺の玄翁和尚の法力によって打ち砕かれ邪気を封印されるまで那須の民や那須野原の獣を苦しめ続けたという
 
 

神楽詠
天つ風雲の通ひ路吹きとぢよ 乙女の姿しばしとどめむ(ん)
むらさめの露もまだひぬまきの葉に 霧たちのぼる秋の夕暮れ
おとにきく那須野が原の黒塚に 鬼すむよしを聞くぞおそろし
いそぐ身は金の鎧にに緋の袴 弓矢をそろえて千里ゆくかな