保持演目

安芸十二神祇神楽

安芸十二神祇神楽は、伊勢神楽十二神祇とも言われ、広島県西部太田川下流域から旧佐伯郡にかけての芸南地方で伝わり舞われていた神楽です。

 十二神祇神楽は、石見地方で古くから舞われていた六調子の神楽が伝えられたとか、また、芸北地域で古くより舞われていた大歳神楽と同じ流れで伝えられた神楽ともいわれています。この十二神祇神楽を白砂舞とも言い代表的な演目に湯立て舞、八つ花、所務分け、将軍舞があります。(廿日市市の原地区には天臺将軍という貴重な舞が伝えられております。)
 河内地区に伝わる十二神祇神楽は伊勢神楽十二神祇舞とも呼ばれ先ほどの白砂舞とは伝わる演目名に違いが見られ、原初の神楽の伝承は同じであったかもしれませんが先ほど紹介した代表的な演目は伝わっていません。(但し、舞い方や演目は違えども、大まかな内容に違いは無く源流は同じであるように思います。)地区の古い文献によると,文明年間に著された五行祭祭文や天文15年著の土公神祭文をもとに文政年初に社人が奉納したとの記述があり五行祭祭文で詠われる祭文の中の盤午大王の五人の王子による遺産相続の神楽や土公祭祭文をもとにした弓神楽が時代を経てこの地の先人に伝授されたものと思われます。当初、下河内神楽団には余興の舞まで含めると34の演目が伝えられ、その内の12の演目を祭で奉納していたようです。
 十二神祇での十二とは日本神話で天地開闢からの天神七代地神五代の十二代を神聖な御代、また古来より貴い数、聖数(方位の十二支や暦の十二直、古代天文学の十二辰など)として使われていることから重要視していたと思われます。現在は19の演目が伝承されておりますが伝受者の高齢化などにより資料または、台本のみの演目もあります。


河内地区に伝わる十二神祇神楽は

  • 神様お迎えする儀式舞
  • 盤醐大王の遺産相続まつわる五人の王子の舞
  • 阿羅比良との問答舞
  • 記紀など日本の神話を基にした舞
  • 余興の舞

 大きく分類する事ができます。

 河内地区には以前は下河内神楽団、上河内神楽団,白川神楽団の3つの神楽団がありましたが白砂舞の流れを継ぐ白川神楽団は昭和40年代を最後に途絶えてしまって活動しておりません。
また、河内地区の神楽団には十二神祇の神楽とともに古式花火の技術も代々伝えられており、秋祭りには神楽と共に奉納してきました。
以前は、下河内神楽団でも河内神社秋祭りの奉納で神楽の盛り上がりに合わせて吹き火や傘火などの古式花火を舞殿の側で行っていましたが、一時の後継者不足により技が途絶えてしまい残念ながら現在は行っておりません。

 

河内地区に伝わるもう一つの神楽団上河内神楽団(かみごうちかぐらだん)では、古式花火(傘火や吹き火)の技術を継承されており、秋祭りのよごろには神楽とともに奉納されております。

 芸北神楽

山県郡や安芸高田市域(旧高田郡)で舞われている神楽で石見地方の大元神楽や出雲地方の佐陀神能が源流と言われる神楽

 芸北神楽は、石見地方に古くより伝わる大元神楽や出雲地方の佐田神能に能や狂言、歌舞伎などの芸能の影響を受けて独自の発展をした石見神楽が、島根県邑智郡地域より伝えられたもので旧石見町矢上地区で発展した比較的ゆったりとした調子で舞われる矢上系六調子の矢上舞(山県舞)と旧羽須美村阿須那地区で発展したテンポの早い阿須那系八調子で阿須那手とも呼ばれる神楽(高田舞)の大きく二つの流派に分かれて伝わっています。また、演目によって旧舞と新舞に分かれており旧舞は「天の岩戸」や「八岐大蛇」「塵倫」「鍾馗」といった神様の登場する神代の物語、神話を神楽にしたもので戦前より舞伝えられてきた演目です。新舞は主に戦後になって創作されたもので、「大江山」や「紅葉狩」「土蜘蛛」など、謡曲や歌舞伎の演目と共通するものも多く、各地に伝わる鬼伝説や軍記物などに登場する武勇に秀でた武将による妖怪退治伝説などを題材に神楽演目として上演しています。
 近年は、初めて神楽を見る人にもわかりやすい新舞の上演を目にされることが多いと思います。下河内神楽団も現状旧舞は、「八岐大蛇」と「塵倫」のみで、大半は新舞の演目を八調子の囃子で演じております。ただ、ゆったりとした六調子の囃子で舞われる旧舞も大変見応えがある舞なので、できれば今後は旧舞の演目の習得にも力を入れていきたいと思っています。

※ 下河内神楽団ホームページでは、便宜上従来より当地に伝わる十二神祇神楽を「旧舞」、芸北神楽を「新舞」としております。

演目紹介

合戦

< 門前博士所望分配の段 >
  (十二神祇神楽)

 父盤子大王が亡くなったおり未だ母の胎内にあった五郎王子が父の遺言により下界の四人の王子に知行の配分を願う(所望分)も拒絶されいよいよ合戦で雌雄を決することとなる。天上の加茂宇治が原で東南西北方四人の王子の四十万騎、中央五郎王子率いる四十二万騎が血で血を洗う激しい戦いにいつもは清らかな川の水も血の色となるほどでそれを聞き及んだ門前博士が麒麟の駒で馳せ参じ五人の王子の仲裁を行い見事知行の分配をしてそれぞれが領地を治めることとなり天下泰平の舞を舞うという物語。門前博士の口上には十干、十二支、十二直(中段)、忌み詞(間段)など陰陽五行説通じる種々の事柄が織り込んである文言となっております。

悪狐伝

 (芸北神楽八調子)

 下野国(しもつけのくに)は那須野原(なすのがはら)に逃げた 三国伝来白面金毛九尾の妖狐(はくめんきんもうきゅうびのようこ)を退治する伝説を神楽にしたものです。 昔、白面金毛九尾の狐(はくめんきんもうきゅうびのきつね)がいて、 天竺(てんじく=印度)や唐の国(からのくに=中国)に於いて悪事をはたらいていましたが、正体を見破られ日本に逃れ、玉藻前(たまものまえ)と言う美女化身して、 鳥羽上皇の寵愛を得ていました。 しかし陰陽師・安部清明(あべのせいめい)の子孫、安部泰親(あべのやすちか)の霊力により見破られ、 那須野原に逃れました。そこで朝廷は、三浦介義純(みうらのすけよしずみ)、上総介広常(かずさのすけひろつね)をを追手に差し向け、九尾狐の妖術に苦しみながならも度重なる合戦の末、みごと討ち取ると言う物語です。


安芸十二神祇神楽(旧舞)

神降し 長刀
へんばい えびす舞
つゆはらい 阿羅比良の舞
きつね舞 つりざん
四天王子 合戦
歌舞

芸北神楽(新舞)

八岐大蛇 滝夜叉姫
塵倫 戻り橋
大江山 悪狐伝
土蜘蛛
羅城門
紅葉狩
山姥
鈴鹿御前